第1063回 環境工学Ⅰ 2006年 7月 5日 「小テスト解説:高齢者に必要な照度は?」

必要照度が選択肢に入った五者択一問題が解けなかったという声が小テスト終了後に聞かれたし、
研究室に正解を聞きに来た学生もいたので、この問題を解説したい(こういう研究室訪問は大歓迎である)。

この問題(小テスト用紙うら面トップの問05)の解答(つまり不適切な記述)は
「選択肢5.高齢者が読書や手作業などを行う場合は,手元だけでなく部屋や廊下全体を同じように
高い照度に保つ必要がある」である。

教科書43ページの「照度基準」のところに、「目の水晶体は老化によって濁りや黄変が生じるため、
光の透過率が低下する。このため、60 歳の人が読書や手作業などを行う場合には、20 歳の人の2 倍以上の
照度が必要である。ただし、この照度は手元を明るくするためであって、部屋や廊下全体を
この照度に保つ必要はない」と書いた。

つまり、高齢者には明るさが必要だからといって、照明器具で部屋全体をむやみに明るくするのは間違いである。
というのは、高齢者は順応の機能が衰えているため、まぶしくなり、かえって見えにくくなってしまうのだ。
手元は若い人の2倍以上の明るさが必要だが、全般照明は若い人の1.5倍程度でよい。

建築学会の私のグループで、このような高齢者の室内環境づくりについて書いた本を8月に出版する。
後期の環境工学Ⅱは、環境工学Ⅰでやった理論の事例編なので、その中でこの本の内容にも触れたい。