第1351回 環境工学Ⅱ 2009年10月9日 「我々教師は言葉で勝負している」

表面結露の発生は、表面温度と露点温度を比較することで予測できる。
このことを板書して、終始この基本に立ち返りながら
内部結露に関する教科書の図を説明していった。
常に基本を確認しながら、より複雑な事例に進んでいくという展開だが、
最後の方で間違いに気がついた。

内部結露の場合は、表面温度ではなく、材料内部の温度と
その部分の露点温度を比較しなければならないのだ。
ただ、顕微鏡レベルで見れば、内部結露は、
材料内部の非常に細かい気泡の空気中の水蒸気が
気泡内壁の温度の低い表面に触れて結露が発生するものであるから、
表面温度を「気泡内壁の表面温度」と解釈すれば、この説明は間違いではない。

しかし、教科書には「壁内部の温度」と書いている。
教科書との整合性という点では、やはり表面温度ではなく材料内部の温度が正しい。
この教科書を執筆したときに、そうした用語の使用には細心の注意を払った。
ある用語が別のページでは別の表現になっているというような事態は
教科書を読みにくくするし、信頼性も低下すると考えたのだ。

緻密に作り上げた教科書を用いながら、授業での用語の使い方を間違えてしまう。
うまく解説を展開させていただけに悔やまれる結果となった。
我々教師は言葉で勝負している。
さらに言葉を磨かなければと思う。