第1463回 環境工学Ⅱ 2010年11月30日 「授業の前、教師は落ち着かない」

先週の講義で、来週から教室の前の方に座るよう指示したので、
後ろの方に座っている学生がいたら前方の席に移動させなければ
と思いながら、教室へ向かった。

中学生や高校生ではないのだから、あまり教室でこまごまと注意したくない。
しかも、すでに着席している学生を移動させるのは気が進まない。
例え先週に予告済みのことであっても、
学生が不服そうな顔をして席を移ることを考えると気が重い。

講義に使う教科書や資料をもって講義開始時刻の少し前に研究室を出る。
もう大学教師になって20年になろうとしているのに、授業の前は落ち着かない。
学生の前に立つという一種の客商売なので、服装をチェックしたり
口臭防止のガムを噛んだりする。
持ち物の確認も欠かせない。教科書、補足プリント、チョーク、差し棒‥‥。
そして研究室を出る。

教室に辿り着いたら、学生は先週の指示通り後ろの席を避けて座っていた。
遅刻して入ってくる学生には前方に座るよう伝える。
ガミガミと叱り続けるのでなく、しかし放任するわけでない形で教室環境を
整えることができた。

講義が終って研究室に戻ると、達成感がこみ上げてくる。
この気持ちも大学教師になって以来、変わることはない。
そうした満足感が講義日記へと向かわせるのかもしれない。